Little Simz / No Thank You

前作「Sometimes I Might Be Introvert」とは打って変わって「Selfish」系統のミニマルなオープニングはやや意外。
M2のコーラス部で漸くファンファーレめいた豪奢で大仰なストリングスが入ってくるが、90’sヒップホップ/ブーン・バップ的なヴァースのビートはあくまでシンプルで、ダブル・ベースの音色がA Tribe Called Questのようジャズ・ヒップホップを思わせる。

重厚感のあった前作に対して、浮遊感のあるトラックが多くなった気がするが、オーケストレーションクワイア等の要素が無くなった訳では全くなく、重厚感と浮遊感、マキシマリズムとミニマリズムの対比や緩急がより鮮明になった印象を受ける。
「Grey Area」にあった「Venom」や「Offence」のようなエキセントリックである種ドープなトラックが最早完全に消え去ってしまっているのは寂しいが、相変わらず完成度は高い。

これまで以上にCleo Solの歌の存在感が大きく、とにかくクワイアが中心を成す楽曲が多い。
殆どノン・ビートでピアノとコーラスだけが彩りを添えるM8やM10等、確かにゴスペルの要素を感じさせるトラックも多く、Stormzyの近作等とも共振するようで、誰もが祈らずにはいられない、そんな時代を反映しているようにも感じられる。

明確な歌だけに留まらず、トラックを構成するシーケンスにもユニゾンを加工したと思しきものが多く、否応無く分断や孤立、隔離といった極めて現代的な感覚と対置されるコミュニティや結束、協調といった概念の重要性を想起させられる。
ニゾン=ユナイトだなんて、我ながら実に発想が安易だとは思うが。