BPM135くらいのアッパーなビートが目白押しで、殆ど全てのトラックがクラブ・バンガーと言っても決して過言ではない。
「Elaenia」よりもダンサブルになったとは言え、未だIDM志向が強く残った「Crush」と較べてよりフィジカルで、Sam Shepherdのハードコア/レイヴへの愛情をストレートに前面に打ち出した印象を受ける。
ハードコアと言ってもその攻撃性はソフィスティケートされており、熱狂の中にあっても汗臭さや軽薄さとは無縁で得も言われぬインテリジェンスや品の良さが滲み出ている。
ウォブリーなベースと4/4のビートが2000年代初頭のエレクトロ・ハウスみたいなM3はこれまでには見られなかった作風だし、M5等ではトランスの要素も垣間見せるが何故か全く下品だったり下世話にならないのはマジックだとしか言いようが無い。
精密な音響の効果は絶大で、全ての音が互いに干渉せず等価に屹立しているような驚異的にクリアなミックスにはいつもの事ながら舌を巻かされる。
中でも特にキック・ドラムに共通する、臨場感がありつつも絶妙に柔らかな弾力性を感じさせるテクスチャは最早職人技の域に達している。
どのトラックも時間を掛けてビルドアップし、ブレイクの引き出し/アイデアも豊富で尺も十分にあり、如何にもDJユースな在り方に徹している。
Shygirl「Club Shy」ではその性急さに些か不満が残っただけに、こういうある種トラディショナルなレイヴ/クラブ・マナーが今は尚更に好ましく感じられる。