Hudson Mohawke / Cry Sugar

代名詞とも言えるプリセットのようなシンセ音は相変わらずだが、Kanye Westのお株を奪うかのようなソウル/ゴスペルのヴォーカル・チョップや、寧ろRustieのイメージに近いアンセミックなシンセ・リフが満載で、「Butter」では聴かれなかった大仰なストリングス等の要素も加わってスラップスティックなマキシマリズムが全編に渡って展開されている。

ヒップホップ由来のBPM100未満の鈍重なビートで占められていた「Butter」に較べ、イーヴン・キックまでもを含むアッパーなダンス・トラックも増えた。
尤もM3では直接MPCのパッドを叩いているかのようなスネア・ドラムの連打が懐かしいし、オールドスクール・ヒップホップのパロディのようなM7やM14みたいなビートもあったりはするが。

M5のAphex TwinSquarepusherばりの高速アシッド・ベースの疾走感は堪らないし、キャッチーなブレイクコアみたいな曲調のM12はRom=Pariの兄弟を思い出させたりもする。
そのハードコア/レイヴ感はHaai「Baby, We're Ascending」でも聴かれたもので、更にはBjörkの新作はなんとガバという噂だから、愈々時代が切り替わろうとしているのかも知れない。

M9後半の多幸感溢れるディープ・ハウス調のピアノ・リフはBeyoncé「Renaissance」と共振していると言えなくもなく、遂にCopid-19を乗り越えてダンス・フロアが戻ってきたような高揚感を抱かせる。
セカンドもTnghtも未聴なので確かな事は言えないが、この7年振りのアルバムでHudson Mohawkeは見事な復活を果たしたと言って良いのではないだろうか。