1曲目でいきなりダブステップをやっているのには驚いた。
ダブステップとは言ってもそのスタイルに特有のダークな音像は微塵も聴こえず、Luke Vibert特有のオプティミスティックでレイドバックしたムードに彩られたテック・ダブステップだ。
最近のレーベルカラーに合わせダブステップアルバムなのかと思いきや、続く2曲目はカタカナ名義の前作を踏襲するようなヒップホップ(Q-Tipの声が聴こえる!)。
その他にもWagon Christのようなブレイクビーツ、ダウンテンポや、本人名義のアシッドハウス〜テクノなど、バラエティに富んだサウンドが並ぶ。
元々フットワークの軽いイメージのある人ではあるが、ここまで異なるスタイルのトラックが一つのアルバムにコンパイルされるのはその長いキャリアにおいて初めての事であろう。
間違いなく本作はLuke Vibertの集大成として位置付けられるべき作品だ。
もっともPlug名義のドラムンベースの代わりにあるのはダブステップではあるが。
ふと振り返ってみると、Luke Vibertのキャリアに限らず、その時のモードが重視されがちなエレクトロニックミュージックのシーンにおいて、ここまで異なるスタイルの曲が一緒くたにパッケージングされた作品というのは非常に珍しい。
他に思い付くのはDaedelusの前作くらいか。
Burialのサウンドは「エレクトロニックミュージックへのレクイエム」と評されたそうだが、仮にダブステップをエレクトロニカによって進化の果てに辿り着いた、テクノ、ハウスのディストピアだとするならば、この作品はもはや未来は過去だという諦念の先で鳴り響く「それでもやはりエレクトロニックミュージックは面白いのだ」という、極めてオプティミスティックなマニフェストのように聴こえる。