Addison Groove / Transistor Rhythm

Addison GrooveとはHeadhunterによるダブステップとジュークの接合をメインテーマに据えた名義であるとの理解をしていたが、本作の印象は意外にもシカゴのジュークが醸し出すプリミティヴィティやフリークネスからは掛け離れていた。

アルバム前半ではSpank Rockの相変わらず下品な事この上無いライムがループされているが、確かにボイス・サンプルを筆頭に断片的なループの集積とパーカッシヴなビートにダブステップの低音域というのがサウンドの基本的な構成要素を成している。
極めてシンプルでリズム・オリエンテッドな音楽ではあるが、その分時折挿入されるアンビエント風のシーケンスやアシッディなSE等が効果的なフックとなっていて、その音のチョイスは極めてテクノ的でもある。

トライバルな印象のイントロが何時の間にやらテクノ風に変遷しているような展開も面白いし、M11なんかでは殆どダブステップやジュークは背面に押し遣られていて、ある意味老成したセンスからはむしろテクノこそがAddison Groove=Headhunterの本質ではないかと思わされたりもする。

BPMもジュークに較べれば控え目で、競わないダンス・ミュージックとしてちゃんと機能しそうという面ではModeselektorのレーベルからのリリースというのにも至極納得がいく。
聴き終えた後には全く何の感慨も湧かない点も如何にもテクノ然としていて、記憶にも記録にも残りそうにはないが不思議と好感は持てる。