DJ Food / The Search Engine

考えてみればDJ Foodが作品毎に全く違った表情を見せるのは作り手が変わっているのだから極々当たり前の話で、Strictly Kevのソロになってから初めてのアルバムになる本作を聴くと、前作のジャズ趣味がPatrick Carpenterのものであった事が良く解り、PCがDJ Foodを棄ててThe Cinematic Orchestraに走った事にも至極納得がいく。

当然ながら本作には残されたStrictly Kevの嗜好が色濃く反映されていて、各トラックがノンストップで紡がれる構成を含めてDKとの「Solid Steel」を彷彿とさせる。
ジャズやヒップホップからエレクトロニカドラムンベースまで、全く異なるスタイルのトラックを縦横無尽に、且つ淀み無く繋いでいくのがそのミックスの特徴であり、面白さだが、本作では中でも抜きん出てロック趣味が強調されている。
M4のハードロック調のギターリフなんかを聴くと、The Qemistsをミックスするようなセンスにも腑に落ちるものがあるが、ロック的な意匠から汗臭さを取り除いて、スタイリッシュに提示する手腕は流石だとも思う。

それにしてもこの現在進行形の如何なるモードにも無関心な、まるでここだけ時間が止まってしまったかのようなサウンドは近年ではLuke VibertPlaidの作品に見出す事が出来た感覚と同質のもので、所謂クラブ・ミュージックは何処までいってもトレンドから逃れられず、余程のビックネームでもない限りは時流に乗り損ねれば後はひっそりと忘れ去られて行くだけと思い込んでいたが、世の趨勢には目もくれない極めてマイペースな表現がそれなりに許されるようになったと感じるのはやはりセカンド・サマー・オブ・ラヴから20余年が過ぎてクラブ・カルチャーが獲得した成熟を物語っているのだろうか。

はたまたずっと変わらずデトロイト・テクノを愛し続けているような人からすれば随分と前から時間は止まったままなのかも知れず、きっと単に自分が作り手と共に歳を取ったというだけの話なのだろう。