King Midas Sound / Waiting For You

The Bug = Kevin Martinの新ユニットによるアルバムは、ダブステップの多様化を象徴するような歌モノダブ・タウンテンポ、あるいはダブステップ版のR&B。

全体を覆うメランコリックなムード、ダビーで奥行きのある音響処理は、何処かブリストル産のトリップホップ、特にTrickyを彷彿とさせる。

そもそもブリストル発のヒップホップとダブステップはそのルーツで言うと年の離れた兄弟みたいなものだし、まさかKevin Martinがリバイバルを企図したとは思えず、そのサウンド(のニュアンス)が似てしまったとしても単なる偶然以上の何かを感じる訳ではない。

けれども思い出すのは少し前に00年代のトレンドセッターたるDiploが、「次に来るのはトリップホップだ」というような事を言っていて、妙な符合を感じたりもする。

考えてみればエレクトロクラッシュが出てきた辺りから、00年代の音楽には一貫して80年代リバイバルムードが付き纏っていたが、去年かその前年辺りから、シューゲイザーリバイバルなんてタームも取り沙汰されるようになった。

まさか本当にトリップホップリバイバルが訪れるとは思ってはいないが、仮に80年が終わって次は90年代、なんて安直な事になると、それはちょっと面白がれないな、と思う。