Falty DL / You Stand Uncertain

多様性が売りのポスト・ダブステップの中にあって取分け幅を利かせているのがフューチャー・ガラージというスタイルらしく、何処ら辺が「フューチャー」なのかは今一判然としないが、メロウでハウシーなフィーリングの2ステップ回帰を指すものだと、一応個人的な理解をしている。

そのスタイルの代表格として名の挙がる事の多いFalty DLについては、Planet-Muのコンピレーションに収録されたサックス使いが印象的なトラックから、またニューヨーク在住というプロフィールも手伝って、ポスト・ダブステップにおけるパラダイス・ガラージの復興主義者
というイメージを持っていたが、Hotflushのコンピレーションにおける、5分余りの時間の中で殆ど一瞬しかダンスビートが持続しないトラックを聴いてその認識に亀裂が走り、このフルレングスを聴いて瓦解するに至った。

Herbertのボトムを重くして、キックを奔放にした感じのオープニング・トラックは未だしも、続くM2では808 Stateめいたシンセのイントロに高揚した期待感が見事に肩透かしを喰らい、意外にもダビーな曲調から一転してジャジーブレイクビーツに変貌するM3や、コズミックなムードの2ステップから一気にAphex Twin風アシッドに雪崩れ込むM5、レイヴィーなドラムンベース調に余程好きなのだろう808 State「Pacific State」のサンプルが挿入されるM8等々の、洗練とスラップスティックさがセンス良く同居したような内容からは、Falty DLが決して単純にダンスフロアだけを向いている訳ではない事が解る。

3曲のヴォーカル・トラックは確かに魅力的だが、その豪奢さに目を眩ませているばかりでは余りに勿体無い。
その裏にはユーモアもあれば毒もあって、そうでなければMike Paradinasが気に入る筈もない。