Atlas Sound / Logos

2009年の買いそびれその2。
N.A.S.A.のメンバーによれば、彼等のようなアメリカの若い世代にとってAnimal CollectiveBrian Enoのような存在なのだそうだ。

Atlas Soundのサイケデリックでドリーミーな音像もまた明らかにAnimal Collectiveの影響下にあり、Panda Bearとのコラボレーションも極々自然な成行きのように思える。
またBradford Coxが最も影響を受けたと語っていたStereolabからLeatitia Sadierがクラウトロックmeetsシューゲイザー風ナンバーで花を添えている。

StereolabAnimal Collective、Atlas Sound、この3つのグループの並びからは確かにアヴァンポップの連続性を感じる。
決してStereolabサウンドにサイケデリアを強く感じる訳ではないが、音響的アプローチを施されたポップミュージックという点では3者は確かに同一の系譜に連なっている。

そこには確かに断絶もある。
Stereolabの音楽を語る際にJohn McEntireやJim O'Rourkeの名前が不可欠であるように、ポストロックと呼ばれたジャンルにおいて、ポストプロダクションやスタジオワークはその表現の核を成すプロセスだと言えるだろう。
一方でAnimal CollectiveやAtlas Soundの音楽における
エレクトロニクスやノイズ、残響処理はよりソングライティングと不可分な要素となり、これ見よがしな押し付けがましさが無く、あって当たり前の要素というか、血肉化しているという印象を受ける。
単純にポストロックの大きな推進力となったProToolsのようなソフトウェアが宅録レベルで普及した結果なのかも知れないが。

Atlas Soundの曲を聴いていると、しばしば歌とギターや電子音が過剰な残響処理によって混じり合い、融解する瞬間が訪れる。
その時文字通り歌と音響の境界は曖昧に崩れ、不可分な要素となる。
その感覚は確かにMy Bloody Valentineのそれを想起させる。
尤も「Loveless」こそ強迫観念的で執拗なスタジオワークの産物ではあるのだが。

それにしても最近のアメリカの若い世代が創るメロディの屈託の無さは一体何なのだろうか。
Animal CollectiveThe Beach Boysだとすれば、Atlas SoundのメロディはしばしばThe Beatlesのようだ。
90年代のアメリカのインディロックに確かにあった「良いメロディ」に対する抵抗感が一切感じられない。
まるで完全にドロップアウトしてしまったような…。