Deerhunter / Monomania

「Halcyon Digest」、Atlas Sound「Parallax」と続いたBradford Coxのソフィスティケート志向から一転して
本作ではDeerhunterのキャリアに於いて最もオーセンティックなロックンロールが展開されている。

ノイジーで目の粗いローファイな音像はPavementやSebadohを想起させるし、オールドスクールなロックンロール・チューンに乗せて聴くBradford Coxのレイジーな歌声は時折Royal Truxをフラッシュバックさせたりもする。
タイトル曲に於ける退廃的・破壊的なフィードバック・ノイズ塗れのインプロヴィゼーションのノイズ・フェティッシュな感覚はPixiesSonic Youthを思い出させるところもあり、90年代に於けるインダストリアルの隆盛がロックンロールの復権と重なっていた事を思い出させるという意味でここではもう1つの90'sリヴァイヴァルが標榜されていると言っても良いかも知れない。

スタイルは真逆だがエコーやリヴァーブからの脱却や
エッジの立った音響へのシフトといった面でAnimal Collective「Centipede Hz」とモードを共有していて、残響の繭に包まれた甘美で眠たい10年が終わり、インディ・ロックのモードにも変化が訪れている事を実感する。
作り手も聴き手もチルより攻撃性を、エスケーピズムよりもリアリズムを、催眠よりも覚醒を希求している、というのは些か解り易過ぎる話ではあるが。

90年代に多感な時期を過ごした世代にとっては思わず頬が緩まずにはいられない内容であるが、現在の若者にとってDemdike StareやAndy Stottのような有効性を持ち得るかどうかは可も不可も無いといった感じのメディアの反応の薄さを見れば明白なのだろう。