Panda Bear / Panda Bear Meets The Grim Reaper

ハープにピアノ、ギター・カッティング等、僅かに器楽音はあるものの「Person Pitch」に於けるそれ程の存在感は無く、全編を通じてシンセのアンビエンスや電子ノイズ、ドラムマシンによる明瞭なビートが主軸となっている。

エコー処理が控え目になると同時にユーフォリアは後退し、エレクトリックな音色にエッジの立ったスクエアな音像やビートは「Centipede Hz」を継承していて、持っている要素は違えどAvey TareとPanda Bearという2つの才能が常に同じベクトルを向いている点がAnimal Collectiveの強みだと再認識させられる。

短いループに乗せて繰り返されるメロディがミニマルに展開されるエレクトロニック・サイケ・フォークには、端的に言ってソングライティングに掛ける熱意が相変わらずゼロで、ポリフォニーも減少し、尚更聴きどころは夜の森に蠢く動物や虫達の息遣いや木々を揺らす風の音を模したかのような種々の流動的なノイズに絞られた印象を受ける。
その細に入り微に入った執拗なまでの凝りようは「Person Pitch」の比ではない。

表面的にはポップスの体裁を纏っていながら、歌やメロディといった音楽的な要素が装飾で、残響や電子ノイズこそが主役であるような主従関係の転覆が図られているよう。
ここでは嘗ての奔放な動物達の姿も鳴りを潜め、恰もその気配さえも背景化したかのようでもあり、アーティフィシャルなイメージを前景化させた「Centipede Hz」と対を成す作品だと言えるかも知れない。