Edit Conference / The Edit - Edit Music Disc Guide

音楽における「エディット」という言葉を自分は殆どカットアップと同義語のように使っていて、背景にあるテープ・エディットの存在や、それが80年代のある時期にディスコやヒップホップ・カルチャーに残した濃密な痕跡についてはこれまで全く知る由も無かった。

磁気テープを直接切り貼りする事で曲を再構築するテープ・エディットの手法は、それがサンプラーシーケンサーの登場によって見る見る内に廃れていった事実からも、リミックス・カルチャー前史と呼んで然るべきものだろう。

音楽の進化がテクノロジーに支えられている事は歴史的に見ても厳然たる事実だろうし、サンプラーシーケンサーから更にそれらの代用品としてのDTMソフトウェアへという進化の過程で、益々容易に且つ正確に音を切り貼りする事が可能になったが、磁気テープの物理的な切り貼りが不可避的に持っていた手作業故の不確実性は、例えばそれが数ミリ以下のズレであったとしても、偶然性という技術による進化とはまた別の、未だ見ぬ(聴けぬ)音楽の可能性を孕んでもいた筈だ。

何せDJにピッチ・コントロールすら不要な時代であるし、初期ヒップホップやアジッド・ハウスのような突拍子も無い、ある意味でバグの産物とも呼べるような発明が産まれる余地はむしろ縮小の一途を辿っているのかも知れない。