Roots Manuva / 4everevolution

本作でRoots Manuvaは、その多様で広範な音楽的バックグラウンドを惜しむ事無く披露している。

ディスコ調のM1に始まり、Antipop Consortiumなんかを思い起こさせるアブストラクトなエレクトロがそれに続き、ソウルやファンク、R&B等の要素によってアメリカン・ブラック・ミュージックへの造詣を垣間見せたかと思えば、勿論レゲエのバックビートや、スティールパン風のシンセが牧歌的なラヴァーズ・ロック調での、自らの出自のレペゼンにも抜かり無く、挙句の果てにはSkunk Anansieなんていう懐かし過ぎる名前を引っ張り出して、ロックへの愛情さえ包み隠そうとはしない。
改めてモダンなベース・ミュージックとの結び付きを確認したければ、M10やM11のサブベースを聴けば良いし、アルバムの至る所にレイヴ・カルチャーの痕跡は転がっている。

如何にも音楽マニアの国らしい、多彩なレコード・コレクションが透けて見えるヒップホップ(この雑食性は良くも悪くもアメリカン・ヒップホップには無いもの)だが、そのヴォリュームにも拘わらず不思議ととっ散らかった印象が無いのは、独特のパトワ訛りの低音でバックトラックにねっとりと絡み付くような独特の声の効用だろう。
Q-Tip然り、どんなトラックもいとも簡単に自分色に染め上げる事が出来る声を持ったラッパーというのは、やはりそれだけで強い。

しかし本作が殆どまともにメディアで紹介される事も無く、いつの間にかひっそりとリリースされていたのは何故なのだろう。
未だ無視される程に退屈な音楽だとは全然思えないのだが。