Sleigh Bells / Treats

一聴して先ずM.I.A.「Maya」との類似に驚いた。
ラストナンバーのギターをサンプリングした「Meds And Feds」のみならず、作品を覆う過剰な音圧のキックまでがSleigh Bellsの影響だったとは。
一体このサウンドの何が、00年代を代表するポップ・アイコンにそれ程のインスパイアを与えたのか。

Sleigh Bellsの音楽からは、一見それと解らないようなやり方で周到にポップである事が回避されている印象を受ける。
勿論、目が粗いが決して重くはないメタリックなディストーションとコケティッシュな女性ヴォーカルによるキャッチーなメロディそれ自体は、有触れているという意味でポップには違い無いが、相反する要素のミクスチャーはポップソングとしての機能性(歌えるとか踊れるとか盛り上がるといった)を纏わない為に、意図的に配置されているようにすら思える。
歌やメロディは過剰なキックの音圧が齎す音割れによって包み隠され、ディストーションの激情は単調過ぎるビートによって冷や水を浴びせ掛けられている。

安易なアヴァンギャルドに依らない、ポップの記号そのものによる反ポップは、チアガールの顔がぐしゃぐしゃに歪んだジャケットにも表象されているが、このチアガールという「ポップ」の象徴が、「Maya」の場合はM.I.A.の自身の顔だったというのは、何とも意味深と言うか、解り易いと言うか。

アーティでコンセプチュアルな試みには違いないが、どちらの作品も出てきた音が大して…。