M.I.A. / Matangi

先ずは何よりM.I.A.の拍子抜けするような気の抜けた脱臼ラップが復活しているのが良い。
冒頭のビートと装飾音のみで構成されたような、ヴォーカルを除いてメロディの要素が一切無いトラックからは、改めてアクティヴィストやデザイナー、レーベル・オーナーである前に、M.I.A.が稀代のラッパー/ヴォーカリストである事を再認識させられる。
個人的にはこれさえあればある程度の事には目を瞑る事が出来る。

オープニングからタブラやシタール等のインド音楽の音色がアクセントとなっているが、重量感のあるキックやウォブリーなベースによる音割れで歪んだノイジーな音像は前作との連続性も感じさせる。
但しRuskoによるブローステップ調が無い分「Kala」以前への揺り戻しも感じられ、個人的には「Maya」よりも心を乱されずに聴けると言うか何と言うか。
前作に引き続きレゲエの要素が散見されるが、Major LazerにM.I.A.が参加したようなユーモア溢れるM10は、前作のDiploによるチージーなラヴァーズ・ロック風のトラックとは対照的である。

しかし微妙にトレンドを採り入れようとするのは悪癖なのか何なのか、The Weekndによる退屈極まりない2トラックは他のトラックから明らかに浮きまくっており、アルバムのトータリティを阻害しているという意味では蛇足以外の何物でもない。

素直なメロディを歌い上げるM.I.A.は好みではないし、下手にメランコリックなメロディも全く似合わない。
これなら「XXXO」のバブルガム・ポップの方がまだ幾らか良かった。