Toddla T / Watch Me Dance



昨年のNinja Tuneのイベントで
Roots Manuvaのサポートとして同行していたToddla Tを観た際には
レゲエ/ダンスホールのリズムを用いた硬質なビートと
チープでユーモアに富んだ上物の組合せに
何とも底知れない珍妙さを感じたものだったが
本作のサウンドは明け透けなまでにポップに振り切れている。


冒頭の3曲−少しばかりベースがウォブリーなだけで
捻りも糞も無いM1のオールドスクールなファンクから
Strings Of Life」をマイナー調にしたようなピアノのイントロで始まるM2に
ノンストップで雪崩れ込むM3の
オートチューンのハウスとグライムのハイブリッド−は特に軽薄この上無く
本作に乗れるかどうかの試金石だと言っても過言ではない。
正直に言って自分はお世辞にもセンスが良いとは思えないジャケットと併せて若干引いた
(各トラック毎にTシャツをデザインするというアイデアの時点で既にダサい…)。


その後はやや正気を取り戻したかのようにToddla Tらしいレゲエ/ダンスホール色の強い
ルーディ且つレイジーな隙間の多いビートが続き
Ms Dynamiteの歌うルーツ・レゲエのクロージング・トラックまでには
すっかりレイドバックはするものの
やはり冒頭3曲のインパクトを払拭するまでには至らず…。


とは言え何もバブルガム・ポップ調が生理的に受け付けない訳ではない
と言うのも本作の前半に良く似た印象の
Wileyの2009年のアルバム「See Clear Now」のあからさまなセルアウトを
自分は確かに大笑いしながら愛聴していたからで
やはり2年間の間に時代の空気が変わったのだとしか…。


その軽薄さや猥雑さをしてToddla TがネクストDiploと称される所以は良く理解出来るが
James Blakeのライヴのチケットが即完売してしまうような時勢に
果たして未だそのチープネスに需要はあるのだろうか。
そして振り返ればやはり一つの時代の終わりは
M.I.A.「Maya」と共にあったのだとも…。