Fennesz + Sakamoto / Flumina

コラボレーション作品に於ける各参画者が発する音の関係性は、各々の要素の力関係が流動的ではあっても全体的には均衡して聴こえるケースと、何れかが何れかの要素に対して伴奏の様に従属するケースとの二つに大別出来ると思う。
同じくFenneszが参加した作品を比較すると、Jim O'RourkeとPitaとのFenn O'Bergは前者で、本作は後者に分類出来るだろう。

本作の楽曲に於いて、Fenneszの発するセンチメンタルな電子音響は更にその上を行くセンチメンタルなピアノの旋律によって完全に背景と化している。
ピアノの旋律を掻き分けて電子音が前面に押し出てこようとする瞬間もあるが最後まで殆ど侵食するには至らない。

それにしても坂本龍一のピアノにはどうしてこうも不可避的に啓蒙的な(もっと直接的な言い方をすれば説教臭い)響きを帯びてしまうのだろうか。
どの曲を聴いていてもACのCMとかNHKスペシャルか何かのサウンド・トラックのようだ。

それは坂本龍一がそのキャリアに於いて積み重ねてきた
テレビ関連仕事の実績による結果であって、音楽には何の罪も無い。
しかしこの音楽にはともすれば「震災後の日本」というような物語性に回収されてしまいそうな危うさもあって、決して坂本龍一自身にそこに寄り添う意図があるとは思わないが、この音楽を聴きながら外を出歩いて、自分の日常をドキュメンタリーに重ねて感傷に浸るような真似だけは絶対にしたくない。