Dorian Concept / Joined Ends

色彩豊かで煌びやかなエレクトリック・ピアノシンセサイザーの音が奏でるセンチメンタルな旋律には音楽に内在する演奏という行為を強く意識させるという点でMount Kimbie「Cold Spring Fault Less Youth」に近い感覚がある。

鍵盤楽器を中心とした多様な音色が幾重にも複雑にレイヤーされた上モノは実に豊潤で、メロディの変化は最小限に、分厚い音の層を構成する膜の1枚1枚の音色・音響や濃淡をランダムに変化させる事で、まるでオーロラを見ているかのような色彩の遷移を聴かせる手腕は相当のもの。

とは言え主旋律が明確な分、サイケデリックな感覚は希薄で、全体的には寧ろ極めてフレンドリーですらあり、益々カオティックになってゆくFlying Lotusとは実に対照的。

「Wrong Rhythm Studies」等というタイトルからは自覚も窺わせるが、雄弁な上モノとは対照的にビートは単調で弱々しくアイデア不足の感は否めない。
数曲ではUKベース・ミュージックからの影響を感じさせなくもないが、ここまでベースが主張しない音楽というのも最近では珍しい。
良くも悪くもビートメイカーというよりも鍵盤奏者が創った作品という感じがする。