Planet Mu / μ20

4年前の「14 Tracks From Planet Mu」に顕著だったシンセ/チルウェイヴとジュークの台頭に加えて、本作では先ずインダストリアルからの影響とブレイクコアの復活に耳が行く。
シンセ熱が発展した結果、アンビエント/ドローン色の濃いトラックが増えているように感じられる点もまた興味深い。

ジュークに関しては最早その筋のトップレーベルだけあって、そのヴァリエーションや多様性は壮観で、成熟した音楽性からはDJ Rashadの功績の大きさに想いが及ぶ。
更に近年勢いが増した感のあるテクノに関しては、ダブ、ノイズ、アンビエントにインダストリアル等の要素の混淆が目覚ましく、Disk2のM1ではMike Paradinasなりのモード解釈でこの流れにオーナー自らが寄与している。

数年前までは確かにレーベルの顔だったIDM寄りのダブステップレーベルのイメージは相対化されている
が、故に全体として荒涼としたサウンドスケープの中にあって、FaltyDLのZed BiasによるリミックスやOriolのフューチャー・ガラージ、Machinedrumのジャングル等のハウシーな感覚は一種の箸休めと言うか、清涼剤的に作用している。
新しいところではHervaのグリッチは本格的なエレクトロニカ・リヴァイヴァルを想起させるし、Jlinのトリップホップとの融合によるジュークのミュータントは充分にシーンのネクスト・フェーズの幕開けを感じさせる。
Anti-Gによるクンビアにも通じるダッチ・バブリングに関しては個人的に10年前にDiploとM.I.A.がやった事との具体的な違いが良く解らないが。

従来のレーベルカラーと新興のトレンドとがバランス良く散りばめられているが故に、突出した印象を残すアーティストやトラックが無いのも確かだが、そんな中で2人の古参 − Venetian SnaresLuke Vibert − のどのモードにも迎合しない強固な作家性は異質な光を放っている。
ともあれ20年以上のキャリアを誇るUKインディペンデント・エレクトロニック・レーベルという点では、WarpNinja Tuneが他のレーベルが発掘したアーティストの移籍にばかり躍起なフットボールのビッグクラブみたいな事になっているのに対して、常に独自の目線で第一線を維持するPlanet Muのチャレンジングな姿勢とMike Paradinasの才覚は賞賛に価する。