Kuedo / Severant

エコーの掛ったドリーミーなシンセに性急なハイハットやタム、例えるならばこれはVex'dがSolar Bears(Tropicsでも良いが)とDJ Diamondに犯されたようなサウンドで、要するにそのチルウェイヴとジュークに侵略されたダブステップの残滓は正に現在のPlanet Muを象徴していると言えるだろう。

どの音もシンセのプリセット音のようで、そのチープネスはRustieにも通じるものがあるが、スラップスティックさや諧謔性には乏しい。
ダンス・ミュージックの機能性は最早度外視されていて、かと言ってチルアウトの道具にしては些か騒々し過ぎるハイハットが邪魔をする。

それなりの熱意を持って現在進行形のポップ・ミュージックに接している人間だけにデコード可能な記号で埋め尽くされたその音楽は、恐らく10年後には一体何が良かったのか解らなくなる類のもので、クラシックにはなりようも無いが、Planet Muのみならず2011年の時代性を切り取ったドキュメントとしては極めて優秀なものだ。

実に賞味期限の短そうなサウンドではあるが、その刹那こそがポップ・ミュージックの醍醐味の少なくとも一端であるとは思う。