DJ Shadow / The Less You Know, The Better

扇情的に打ち鳴らされるドラムのブレイクビーツにボイス・サンプルのカットアップ、紛れも無く本作は「Endtroducing.....」や「The Private Press」のDJ Shadowを待ち焦がれた人間にとって最高のイントロで幕を開ける。
けれども自らの作家性にとってのアイデンティティとも言えるサンプリングを廃してハイフィに取り組んだ「The Outsider」の身軽で勇気ある冒険の続きを期待した人間には幾分肩透かしを喰らう内容でもある。
ハイフィの次が見付けられないのは何もJosh Davisに限った話ではないが、それにしてもこのサンプリング回帰振りはそのディスコグラフィから「The Outsider」を抹消しようとでもするかのようだ。

とは言え本作が単なる「Endtroducing2」でないのはヴォーカルをフィーチャーしたトラックの多さが物語っていて、中でもDJ ShadowのトラックにPosdnuosとTalib Kweliがラップを乗せるM3は古いヒップホップ・ファンからすれば夢のような組み合わせだ。

しかしアルバムを聴き終えた後にそれよりも強く印象に残るのは実にいなたいロック臭で、「ギターをターンテーブルに持ち替えたJimi Hendrix」なんていう形容が示すように元よりロックは同時期のインスト・ヒップホップのプロデューサー達とDJ Shadowを差別化する要素であったけれども、ヘヴィメタル調のM2やタイトルからして如何にもなM13のような直接的なロック・ギターのサンプルが核になったトラックはこれまでに無かった類のものだ。

ニューウェイヴ風のトラックに些か暑苦しいヴォーカルが乗っかるM6は何処かJames Lavelleのセンスを思い起こさせるもので、まさか2011年に於いて再びこの二人を繋げて連想する事になるとは思いも寄らなかったが、今ならオリジナルUnkle復活なんて話が出たとしても然して不思議ではない。
決してそこに何らか期待する事があるという訳ではないけれど…。