Planet-Mu / 14 Tracks From Planet Mu

自分が初めてまともにダブステップに触れたのはPlanet-Muのコンピレーションだった。
その意味で今にして思えばMike Paradinasの「方向転換」は自分にとって結構重要な出来事だった。

その後のHyperdubの5周年コンピレーションが、様々な方向へと拡散しつつあるダブステップのドキュメントだったとすれば、本作は既に粉々に砕け散ったダブステップの破片の寄せ集めのようだ。

ベースが跳ねるOriolの煌びやかな2ステップ回帰にBoards Of Canadaを数倍チープにした感じのSolar Bearsのチルウェイヴ、Floating Pointsの浮遊感溢れるヒプノティックな2ステップ・ガラージとBoxcutterによるIDMとウォンキとR&Bの奇妙な遭遇、Starkeyのトラックをエレガントなグリッチホップに仕立てたSlugabedに、Falty DLのハウシーなアーバン・ガラージ・ステップ、うねるベースラインと時折入るストリングスのサンプルが印象的なIkonikaのファンキー・チップ・チューンに、Rudi Zygadloの変態的にスキゾフレニックな歌モノ・ウォンキー。
この多様性の中ではCeephax Acid Crewの臆面も無いアシッド・テクノ・ポップとて然して浮いた印象は与えない。

しかし敢えてこの断片化に共通項を見出そうとすれば
上モノ、と言うかシンセサイザーの存在感が矢鱈と目立ち、そう言えばそれはポスト・ダブステップとチルウェイヴとを繋ぐ要素でもあり、ベースに代わる新たな「時代の音」がこれなのだろうかとも思ったり。