Rustie / Glass Swords

これもまたシンセサイザーが主役の音楽だが、最近のシンセポップに顕著であるらしいチルアウト感覚とは異なり、Rustieのサウンドは些か躁的ですらある。

ヴァース/コーラス/ブレイクが目まぐるしく入れ替わる展開は奔放で忙しなく、絶えず耳の奥を刺激する高音のSEは、例えるならシンセのオーロラが揺蕩う夜空を飛び交う焼夷弾のようだ。
音色的な目新しさは無いどころか、特徴的なシンセギターと言い、ビートを構成するパーツと言い、まるで安物のシンセのプリセット音のようだが、そのチープネスはむしろこの音楽の特異性に寄与しているように感じられる。

そのフリークネスには確かにHudson Mohawkeと共通する感覚があるが、Rustieにより顕著であるのはレイヴ・ミュージックの要素だろう。
ブレイクからコーラスに移行する際の扇情的に連打されるキックやスネアや上昇する持続音は正にレイヴのクリシェそのものだが、Toddla-Tなんかのレトロ趣味とは異なり何処かジョーク的であり、セカンド・サマー・オブ・ラヴを知らない世代が、Burialが葬ったレイヴ・ミュージックの亡骸を墓から引き摺り出して見世物にしているような不謹慎な痛快さがある。

しかし大昔のプログレみたいなジャケットや、「硝子の剣」などという恥ずかしいタイトルはやはりHudson Mohawkeに通じるものがあり、音もそうだがどう育ったらそのようなセンスが生まれてくるのか、The Designers Republicが最も格好良いとされていた時代の人間には皆目見当が付かず、漸く自分より若い世代の作る音楽を聴く事の面白さが掴めてきたような気にもなってくる。