Neon Indian / Vega Intl. Night School

チルウェイヴをまともに通過していないので実際のところは良く判らないが、ディスコティックで粘着質な腰に来るシンセ・ベースや、ブギーファンクにも通じるスペーシーな上モノ等、これほどブラック・ミュージックからの影響を前面に押し出したチルウェイヴのアーティストは他にいないのではないか。
クラブ/ダンス・ミュージックの側からのディスコの参照は、この30年ほぼ間断無く続いてきた訳だが、チルウェイヴに限らずインディ・ロック/ポップの側から、これほど真正面・前面的にディスコに取り組んだ例は他に思い当たらない。

煌びやかなディスコ・サウンドとは対照的に、背景では無数の小動物やら虫やらが蠢いているような有機的なノイズや甲高く騒々しいSEが絶え間無く鼓膜を刺激し続け、集中して耳を傾けていると頭がおかしくなりそう。
そのエコー&リヴァービーな音像も加えて確かにAnimal Collective/Panda Bearの影響の延長線上にあるサウンドなのは間違いない。

一方で時折漂わせる60'sポップス・フレイヴァーや、野暮ったいエレクトリック・ギターのAOR感にはAriel Pinkに通じる諧謔性があるし、いかがわしさ、ハイプっぽさにはMGMTを思わせるところもある。
またM8からシームレスにミックスされるM9〜M10までの一連の流れに於けるハウス解釈には何処かフレンチ・タッチによるディスコ・リコンストラクトを思い起こさせるところもあり、そう言えばスペーシーなプログレ風のM11はAirを彷彿とさせたりもする。

想起させるスタイル自体は10年以上前のものばかりで今更な感も無くはないし、基本的にはワンアイデアでスタイルの幅も曲調の緩急も乏しいが、そのディスコ・フレイヴァーやキャッチーなメロディが持つポップネスには否定し難い魅力がある。
それは80'sの幼少期の記憶を強力に喚起させ、Princeが逝った時にこのような音楽を聴いている事には何かしら感慨深いものがある。