Slugabed / Time Team

ポスト・ダブステップの文脈でその名前を聞く事の多かった印象のあるSlugabedのフルレングスには、確かにJokerなんかに通じるメロウネスもあるが、M2のバウンシーなベースや眩いまでのシンセの色彩はRustieを思わせるもので、全体的にはむしろヒップホップ由来のビートとして捉える方が自然だという気もする。

ただRustieが繰り出すシンセのプリセット音の様なチープネスと較べると、その奥行きの深い、幾重にもレイヤーされた音像はカオティックですらあり、一音一音の響きが有する複雑なニュアンスにはFlying Lotusを彷彿とさせる執拗さもある。

細部への拘りようはある種のエレクトロニカを思い出させるところもあり、Starkeyのリミックスから受けたスラップスティックさは何処へやら、意外な程洗練されていて、スキルも高くセンスも良い一方で、RustieやHudson Mohawkeの若さ故の無軌道さと較べると何処か没個性で、良い所取りのエピゴーネン特有の中庸さを感じなくもない。
まぁFlying LotusやRustie以前にこのサウンドを聴いていれば印象は確実に違ったのだろうが。

完成度には文句の付けようが無いにも拘らず、何だかケチを付けたくなってしまう作品という点では、Hudson Mohawkeの後を追うようだったEskmoに近い感覚があり、思わずWarpの背中を追いかけるNinja Tuneという構図が脳裏を掠めたりもして些か愉快ではない。
そもそもヒップホップに関して言えばNinja Tuneの方が専門な訳で、Lornの新作での巻き返しに期待。