Planet Mu / Bangs & Works Vol.2 The Best Of Chicago Footwork

やはり旬なシーンの変化とは目まぐるしいもので、前作から1年余りでリリースされたジューク/フットワークのコンピレーションの続編では、その後のシーンの多様な展開を確認する事が出来る。

ミニマルと呼ぶのが憚られるくらいの単調さや、シンプル極まりない構造に音響的な奥行きの無さは、確かにこのジャンルが醸し出す異物感の源泉だった筈だが、例えばM2なんかのそれなりに「音楽的」な展開やM4等の明確なメロディからは、プリミティヴィティから成熟へと向かうベクトルが聴き取れ、背景でアンビエントが鳴っているようなトラックもある。

エレポップ/ニューウェイヴ風のシンセ・フレーズやエレクトロニカ的な電子ノイズ、クラシカルなストリングスからロック、ソウル調ネタ等、より多彩になった細かくループされるサンプリング・ソースからは、各々が音色によって個性を競い合う様が透けて見えるようでもある。
とは言えどの音が誰のものなのかは相変わらず良く判らず、流石に特定のアーティストのフルレングスを頭から最後まで楽しんで聴ける自信は余り無い、という点で依然匿名性はこのサウンドの肝である。

UKのベース・ミュージック界隈で盛んに取り入れられた事も手伝って、飛び道具的な面白さが薄れた感は無くもないが、相変わらず何をどうしたらこのような音楽が生まれるのか皆目見当が付かず、全く体が動かないという点ではヘッド・ミュージックの極みのように思える一方で、シカゴではこれがダンス・ミュージックと言うのだからやはり面白い。

その匿名性が故にこのシーンからは特定のスターが生まれないままいずれフェードアウトしてゆくような予感もあるが、その時ジューク/フットワークの代表作として本作は語り継がれてゆく事になるだろう。
その意味で本作はIDMに於ける「Artificial Intelligence」や、アブストラクト/トリップホップに於ける「Headz」、或いはエレクトロニカに於ける「Clicks & Cuts」のような、ポップ・ミュージック史に残る記念碑的コンピレーションになるのだろう。