FaltyDL / In The Wild

茫漠と霞んだ音像は正に宛ら荒野。
ポスト・ダブステップに於ける二つの極を例えばSbtrktとActressと仮定するならば、その中間に位置するように思われたDrew Lustmanの音楽性は作品を追う毎にどんどんと後者の方に接近していく感がある。

前作ではその方向性を押し止めるように歌が作用していたが、本作では整合性の取れたメロディさえ希薄で、終盤に到るまでダンスビートが持続する事も稀。

主にジャズ等をサンプリング・ソースとした生音主体の音色からハウス・ミュージックのような錯覚に陥るが、ジュークからの影響と思しき断片的なループをコンポジションの核に据える手法は寧ろOneohtrix Point Never等の新しいミュージック・コンクレートに近いようにも感じられる。

作品の大部分で浮かれ騒ぐ事を忌避するかのような禁欲主義が貫かれているが、それ故にM11の儚い女声ヴォーカルのループとドライヴするガラージのビートに始まり、M13の変則的なジャングルやLuke Vibert宛らのファンキーなブレイクビーツのM14を経由して、ジャジーなM15と到る一連の流れには霧が晴れるような解放感がある。