Speech Debelle / Freedom Of Speech

レーベルとの悶着のうわさはデマだったのか、晴れてデビュー作に続いてBig DadaよりリリースされたSpeech Debelleの2作目。
生音主体のトラック・メイキングという点では前作同様だが、前作のサウンドがUK版のフィリー・ソウルとでも言えそうなオーセンシティを感じさせたのと大きく印象が違っているのは、Warpが契約を結んだというトラックメイカーKwesの個性に因るところが大きいのだろう。

器楽音が外に向かって拡散していくような残響処理や、遠く彼方で鳴っているようなエレクトロニクスによるアンビエンスはシューゲイズ的でもあり、殆どの音が周縁で発せられているその中心にSpeech Debelleによるラップと重たいベースだけが屹立しているような印象を受ける。
エレクトリック・ギターは多用されているが特段シューゲイズ風という訳でもなく、むしろピアノの低温が発する倍音が恰もディストーションのように作用する事はちょっとした発見だった。

如何にもオリンピックのテーマ曲然とした凡庸なM8を別にすれば、不自然な程性急で唐突なフェードアウトなんかを含めてBig Dadaらしいフリーキーさも感じさせ、Roots Manuvaの客演も前作よりは余程しっくり来る。

最終曲のような矢鱈とドラマティックな展開や、Speech Debelleの情感に溢れた歌うようなラップは少々暑苦しくトゥーマッチで、ヒップホップとして聴くには余り好みではないものの、予想していたよりは遙かに面白い。