The Roots / Undun

最早The Rootsの安定感は、現在のヒップホップはおろか、決して短くはないヒップホップの歴史に於いても他に比類出来るものの無い水準にあると言って良いだろう。
コンスタントに重ねられたリリースは本作で11作を数え、更にそれらの作品にはそれぞれに違った表情があり、しかも常に軽々と及第点を超えてくるのにはいつもの事ながら舌を巻かされる。

本作では先ずサインウェイヴで始まるイントロダクションに驚かされるが、何処かノスタルジックでレイドバックしたムードから、中盤スピリチュアルなインストへと雪崩れ込むM3から、勇壮なピアノの旋律に、決して上手くはないが味わいのあるDice Rawのヴォーカルが乗るM4への流れは最初のハイライトだと言える。
殆どのトラックでコーラスにヴォーカルをフィーチャーしている点は本作の特徴で、The Rootsの諸作の中でも取り分けソウル色が強い印象を受けるが、それは「Things Fall Apart」のジャジーでクールなものとは違い、もう少しノスタルジックでアーシーなもので、John Legendとのコラボレーションも無駄ではなかったと思わせる。

Sufjan Stevensの曲に着想を得た、Redford Stevensなる架空の人物の一生というのが本作のコンセプトであるらしいが、確かにトラックの一つ一つが宛ら小説の一章であるかのようなストーリーテリング力は流石で、アルバムのクライマックス(晩年?)に当たるラスト3曲にはそのドラマツルギーが凝縮されている。
アウトロと呼ぶには余りに主張の強いこの3曲には、前作に引き続きチェンバー・ポップからの影響が色濃く反映されていて、一瞬たりともラップが入っていない事を差し引いてもここでのThe Rootsの姿は最早ヒップホップ・バンドですらない。

CommonやKanye Westにも言える事だが、特に「Late Night With Jimmy Fallon」のハウスバンドを始めてからのThe Rootsには、インディ・ロックから多くのインスピレーションを得ているような印象があり、?uestloveの今尚旺盛な音楽的好奇心がThe Rootsにとってそのフレッシュさの源泉となっているのは間違い無いように思える。