Wiley / Evolve Or Be Extinct

またもWileyが攻勢を強めている。
気分が乗った時のWileyは思い付くままにトラックを量産し、大した取捨選別も無くリリースする(ように見える)から付き合う方も大変だ。
僅か半年というスパンで届けられた本作は、勇ましいタイトルの割に前作に引き続きこれまでのWileyの様々なスタイルがポップにコーティングされてバランス良く配置された総括的な内容になっている。

Roots Manuvaのようにラスタ・カラーを前面に押し出すタイプではないだけに、M1でその口からザイオンという単語が飛び出してきたのにはちょっとした軽い驚きがあったが、改めてUKブラック・カルチャーへのカリブ海からの影響の甚大さを思い知る感があった。
Wileyの代名詞である重低音のベースラインとハーフステップというダブステップの雛型のようなトラックも満載だが、ホップ・ヒットなった「Wearing My Rolex」系統の4つ打ちのテクノ路線もあれば、「See Clear Now」で多くの人を引かせたヒアノやR&Bヴォーカルを使ったメロウなポップス路線も健在で、特にリズム面での引き出しの多さはトラックメイカーとしてのWileyの非凡さを物語っている。

しかしシンプルな構造と音色のヴァリエーションの少なさ、そして何より唯一無二のファスト・ラップが齎す強固な作家性が故にどのトラックも同じように聞こえてしまうというのは実に難儀な話で、それぞれは文句無しに格好良いにも拘わらず、流石に22曲なんていうヴォリュームになるとマンネリズムを感じてしまうのもまた確か。