Ninja Tune / Ninja Tune XX Vol.1

Ninja Tuneの活動20周年を記念するコンピレーションの1枚目は宛ら00年代後半から現在に至るブレイクビーツのトレンドのショーケースのようで、大雑把に分類すると3つのシーンに集約出来ると思う。

まずDiploが牽引したゲットー/ベース・ミュージックには、Spank RockやPoirierに、新しいところでToddla T、更には先駆者としてのRoots Manuvaを含めても良いかも知れない。
それから00年代の後半にロサンゼルスやグラスゴーで同時多発的に顕在化した新しいインスト・ヒップホップ/グリッチ・ホップの流れがある。
Flying LotusDaedelusからRustieやEskmoに、更には古株のAmon Tobinまでもが今やウォンキー・スタイルのトラックを制作している。
最後は当然ダブステップで、BengaやZombyやJokerに加え、レーベル一押しのEmikaをここに加えても良いだろうし、The Bugはダブステップとゲットー/ベース・ミュージックを繋ぐクロス・カルチュラルな存在として捉える事も出来る。

これらの面々は前年に同じく20周年を迎えたWarp Recordsのコンピレーションに較べて全体的には確かにより時代に沿った感じがあり、それはWarpが頑なにダブステップやゲットー/ベース・ミュージックに手を出していない事の結果ではあるけれども、Ninja Tuneに較べてWarp Recordsが遅れを取っているというような話ではなくて、それはこのイギリスを代表する2つのインディ・クラブ・ミュージック・レーベルの立脚点の違いを表しているに過ぎない。

Disk Shop Zeroの飯島直樹がライナーで述べているように、Ninja Tuneは自ら最先端の音楽を開拓し提示するタイプのレーベルではない。
むしろクラブカルチャーのトレンドに対し常に鋭敏なアンテナを張り巡らせ、そのセンスに引っ掛かるサウンドを積極的にフックアップしてきた。

重要な事はその幅広くある種無節操なセレクションが、ジャンルやスタイルの混合=ミックスによって幾多もの化学反応を誘発してきた点で、そのDJという行為が持つ根源的な快楽(混ぜるという事)への欲求によって、シーンに迎合するよりもむしろそれを撹乱してきたのだとも言えるだろう。
その化学反応が端的に現れるのはリミックスで…Vol.2に続く。