Dean Blunt & Inga Copeland / Black Is Beautiful

真っ赤なジャケットに映える「EBONY」の文字、タイトルは「Black Is Beautiful」…全く意味が解らない。
咳込む男声の不快なループから、一聴するとアンビエント風だが、微妙な不協和音にまるでチル出来ないシンセにフリージャズをサンプリングしたようなドラムの乱打が絡むM1のみに曲名が付され、後は連番という怠惰この上無い態度を含めて、Hype Williams改めDean Blunt & Inga Copeland(これまた怠惰)のフルレングスには本気か冗談か判らない、鬼気迫る諧謔性が迸っている。

シンセ主体のサウンドと歌に対するリヴァーブ処理を併せて、Animal Collectiveの影響下から発生した、昨今のチルウェイヴ/シンセ・ポップとの連続性を感じもするが、そこには明確な断絶がある。
全編を覆う、Actressにも通じる過剰なサーフィス・ノイズによってあらゆる要素は茫漠と霞み、そのレイジーで酩酊した音像は陶酔的ではあるがしかし、チルアウトと言うよりはダウナー、ドリーミーと言うよりはバッド・トリップ的で、要するにドラッグの臭いが強烈に漂うという点に於いて、00年代のアメリカン・インディを牽引したサイケデリアとは様子が異なっている。

その冗談臭さや悪意に満ちた感性は漸く10年代を強く実感させるもので、何処か「怠惰」だとか、「変態」だとか、「気違い」だとかいった形容詞が褒め言葉として機能した90年代を思わせるという意味では、Oneohtrix Point NeverやAriel Pinkなんかはその流れを先行していたのかも知れない。
考えてみれば、時代の遷り変りはいつだって音色やスタイル以上に音楽によって誘引される形容詞の変化と共に実感されてきたような気もする。

それにしても、Actressに引き続き、これが黒人の仕業だというのが…。