Liars / Wixiw

アンビエント風のシンセにストリングスやピアノやギターが絡むM1と言い、ダブステップ調のビートのM2と言い、間違い無く本作がLiarsのディスコグラフィ上最もエレクトロニックな質感を持った作品であるのは確かで、彼等にとっての「Kid A」等と言ってみたくなる衝動に駆られるものの、その拭い難いいなたさから想起したのは、サイケデリック・トランスやドラムンベースに手を染めた時期のPerry Farrellだった。

M10のアッパーな四つ打ち等を始め、ダンス・ミュージックのビートは本作の大きな特徴の一つであるが、Ian Curtisの亡霊が乗り移ったかのような(殆ど唯一直接的にポスト・パンクを連想させる)M3や、催眠的な二拍子がユーフォリアの希薄なAnimal CollectiveのようなM6等、ヴァリエーションはそれなりに豊富でもある。

確かに節操は無いが、彼等と同時期に現れたポスト・パンク・リヴァイヴァルのバンドの多くが今や殆ど存在感を示せないで居るのに対して、Liarsの「永遠の三割バッター」的な佇まいの陰には、カレント・ミュージックに対する貪欲な探究心が見え隠れする。

ポップ・ミュージック・マニアによるポップ・ミュージックという意味では、それこそRadioheadに通じるものがあるかも知れないと初めて思ったものの、Liarsに「OK Computer」や「Kid A」が作れる気がしないのは、単なる資質の違いかはたまた時代のせいなのか。