Madlib / Medicine Show #1:Before The Verdict

Madlib名義での新シリーズ、第1段のテーマはずばりヒップホップ、しかもGuilty Simpsonとがぶり四つに組んだラップアルバムというのが嬉しい限り。
ラップを意識しての事か、ビートのズレ感は控え目だが、Madlibらしい、ミキシングなどに興味は無いと言わんばかりの怠惰でスモーキーなトラックに乗ったGuilty Simpsonのルーディーなラップが実に格好良い。

改めてMadlib印のトラックを注意深く聴いていて、最近良く似た感覚を覚えた事があったと記憶を手繰り、思い至ったのはHudson Mohawkeのトラックだった。
サウンドやメロディは全然違うが、やたらとぶっきら棒なミックスや唐突なカットアップが齎すフリーキーな感覚には親近性を感じる。
Hudson Mohawkeと言うと何故かAphex Twinと引合いにされる事が多いが、「J-Dillaの息子」を自任するFlying Lotusと対置するならば、むしろ「Madlibの後継者」と表現する方が個人的にはしっくり来る。

Hudson MohawkeMadlibのトラックにおけるサウンドの決定的な差異は、要はサンプリング主体か否かにあると思うが、つい最近聴いたばかりのRJD2のアルバムにおいては懐かしく、また若干時代錯誤的に感じられたレコードノイズに塗れたサウンドMadlibの場合では些かも古臭い印象を与えない。
勿論それは聴いた瞬間にMadlibだと判るサウンドの強固な作家性に起因するものではあるだろうが、RJD2Madlibのトラックにおけるサンプリングの使用方法の差異にも一因がある気がする。

DJ Krushが自身のトラックメイキングにおけるサンプリングソースを絵具に例えて語っていた事があったが、RJD2やかつてのDJ Shadowのトラックがその絵具を使って描かれた精密な写実画だとすれば、Madlibのトラックは世界中から集めた雑誌やらチラシやらゴミやら何やらを切抜いて貼り合せたコラージュのようだ。

絵画が写真の登場によってどれだけ現実に近付けるかという命題を失ったのと同様に、その手法が極々有触れてしまったが故にサンプリングによる写実主義が衰退したのだとすると、今求めるべくは「何を再現するか」ではなく「どう使うか」ではないか、そんな事を考えた。