Ariel Pink's Haunted Graffiti / Mature Themes

M1の高らかに鳴り響くオルガンの音色は、まるでThe Doorsみたいで、前作の80's臭さに対して本作の前半部分には60'sを思わせるところがある。

ローファイこの上無かった音像は、拍子抜けするほどクリアになり、悪ふざけとしか思えなかったコーラスワークは、M3等では宛らThe Beach Boysばりのオーセンシティすら感じさせ、悪意の欠片も聴き取れない。

ところがシリアスな顔を持続するのに疲れたとでも言わんばかりに、丁度折り返しに配置された、劣悪なカーステレオで聴くAMラジオのような音像の「Yellow Submarine」風のブギーを契機に、諧謔性が前景化してくる。
得意の80's風シンセポップや、アンビエントをバックにドラッグをキメて歌うFrank SinatraみたいなM12、更には世にも間抜けな馬の嘶きが耳を突くM8等々…。

ナンセンス極まりないそれらは、しかし相変わらずの強烈なシニシズムを感じさせるという意味で、サウンドは全く異なれど、Hype WilliamsやSun Arawによって顕在化したように思える怠惰な時代のモードに先駆けていたのかも知れないとも思えたり。