Dirty Projectors / Swing Lo Magellan

Bjorkとのコラボレーションを鑑みればやはりと言うべきかAmber CoffmanとAngel Deradoorianの声はこれまでにも増してより楽器的に使用されている(何せ女性陣がリード・ヴォーカルを取る曲はたったの1曲しかない)。
「Bitte Orca」で聴かれたような大仰なギター・サウンドが展開されるのはM1くらいなもので、淡々とビートを刻むドラムとベースラインの骨格にほぼ声だけで装飾を施したM3は正に「Mount Wittenberg Orca」の続きを聴いているようでもある。

本作のサウンドは確かに構造的にも、音色の面でも「Bitte Orca」と較べてシンプルで、もっと言うなら地味でもある。
Dave Longstrethが持つアカデミックなバックグラウンドを感じさせるようなテクニカルでトリッキーな曲は少なく、伝統的なソング・ライティング復権を標榜したのかもとさえ訝ってしまうほどだ。

ハンドクラップやドラムマシンを用いたビート・プロダクション等に確かに才気は嗅ぎ取れるものの、Pitchforkを始めとするメディアが挙って2012年の年間ベストの上位に揚げるほどのインパクトは遂に理解出来なかった。

或いは評価のポイントとなったのは音楽的成熟という事なのかも知れないが、個人的には未だ成熟に絆されるほどDirty Projectorsの冒険に長く付き合ってきた訳ではないし、もっとエキセントリックな彼等のサウンドを聴きたいという欲求がやはり強く残る。