Omar Souleyman / Wenu Wenu



ヴォーカルと交互にリードを取るアラブ音階の狂騒的なシンセの独奏がとにかくユニークで
流動的なフレーズからこの音楽の出自が即興にある事を窺わせるが
クワイトにも通じるリズムには人が言うほどの特異性は感じない。


想像よりも突飛な音楽ではなく聴き易いという意味ではポップですらあり
Four Tetの存在感は全く聴き取れないが
恐らく欧米向けに漂白されてしまった部分もあるのだろうと想像する
(尤もKieran Hebdenも白人ではないが)。
寧ろこのいなたいダンス・ミュージックとFour Tetサウンドが持つ繊細さやメランコリーを
混ぜ合わせる事なく重ねてみても面白かったかも知れない。


世界が均質化されてゆくが故に我々はこの音楽を例えばシカゴのジュークと並列に聴く事が出来るが
この独特のシンセはそうそう容易く他の民族が弾けるものではないだろうという意味では
民族の血にも似たある文化圏特有の手癖のようなものまでは均質化され切っていない。


そのような均質化され切らない手癖のようなものに新奇さを見出し開拓してゆく事こそ
00年代以降のグローカル・ビーツの本質であるだろう。
尤もそのような事はBeatlesとRavi Shankarの時代から変わらないと言われれば返す言葉は無いのだが。