Zomby / Dedication

多くのポスト・ダブステッパー達が盛んにレイヴ・カルチャーの熱狂へと回帰するように見える中、Zombyは依然としてBurialの教えを忠実に堅持しているように思える。
それは「レイヴ・カルチャーへのレクイエム」と称されたBurialのサウンドから、「レクイエム」の部分を抽出して濃縮し、チップチューンを付け足した様な音楽で、Burial直系の籠った音像とメランコリックなメロディが醸し出すディストピックなムードにロービットのシンセ音が絡み合い、一筋縄では行かない異物感を創出している。

物憂げな女声が執拗にチョップされるM2などでは、ウィッチ・ハウスと呼ばれるスタイル(これもまたBurialの強い影響下に生まれたものだ)との同調も見せているが、微弱なビートからは人を踊らせようという意識は微塵も感じられず、フューチャー・ガラージのハウス回帰とは全く様子が違っている。

短いトラックが余白無しで紡がれてゆくアルバムの構成からは、ダブステップ版の「Donuts」という表現が思い起されるものの、コンセプチュアルというよりも投げ遣りな印象の方が強く残る。

久方振りにダンスの季節を迎えていると聞く現在のロンドンから放たれた音楽だとは思えない、と言うよりもその熱狂に冷や水を浴びせ掛けるような作品で、かつてデカダンスをこよなく愛した4ADを惹き付けたというのも至極自然な成り行きのように思える。