Flying Lotus / You're Dead!

「Cosmogramma」以降拡大し続けるジャズの要素は本作でいよいよアルバムを通低する核にまで発展した。
ビートメイカーとしての姿は限りなく後退し、ThundercatのスラップベースやAlice Coltrane譲りのハープ、ピアノといったこれまでのFlying Lotusサウンドのジャズ・フレイヴァーを特徴付けてきた音色に加え、サクソフォンやブラシ等を操るコンダクターとしてのSteven Ellisonの姿が立ち現れている。

ジャズそのものへの接近は重要なトピックには違いないが、しかしそれよりも強く印象付けられるのは本作が持つ極端な混沌で、それは死後の世界という観念的なコンセプトと無関係ではないだろうと思われる。

トラック単位で云々すべき明瞭な展開や起伏は無く、それらの境界はごく曖昧で、その余りの流動性や取り留めの無さには眩暈がするようだ。
アルバム全体を俯瞰して初めてその像が明らかになるような様は正に曼荼羅のよう。
唯一ラジオ向けと言えそうなKendrick Lamarの熱の籠ったラップをフィーチャーしたM5だけは例外で、M1〜M4はそこへと到る長いイントロのようでもある。

各音の輪郭は極端なまでに曖昧にミキシングされ、音像に於いてもこれまでとは比較にならない程の混沌が表象されている。
特にノイズ・リダクションなどまるで施されていないかのような過剰なクリッピング・ノイズは、確かにアルバムの世界観を表現する上で効果的でアーティではあるが、聴き易さという意味でのポップネスを阻害しまくっているのはどうにも否めない。