Flying Lotus / Flamagra

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「1983」や「Los Angeles」を彷彿とさせるM1のシャッフルするビートが待望のFlying Lotusの帰還を告げている。
タイトルもジャケットもその世界観を踏襲してはいるが、その高揚感から自分が「You're Dead!」の過剰な混沌やアヴァンギャルディズムに関心はしつつも、心からは消化出来ていなかったのだと実感する。

M2はThundercatのベースを従えた「Until The Quiet Comes」系のLAビートとジャズのキマイラで、M4のイントロのスピリチュアル・ジャズの壮大さには「You're Dead!」の成果がポップに昇華されている。
正にFlying Lotusの集大成と言える仕上りで、その整理整頓された混沌は円熟味を感じさせる。

一方で新しい要素も散在しており、本人が弾いていると言うM5等のシンプルなピアノの音色は新鮮だし、ラヴァーズ・ロック風に始まって、イーヴン・キックとエレクトリック・ベースが少しSquarepusherを彷彿とさせるフュージョン風のM8や、M23のレゲエ調のベースラインやリズムは新機軸と言って良い。
ゲーム音楽のようなM10は同時に何処かYMOっぽくもあり、Thundercat「Drunk」との共振も感じさせる。
そのThundercatが歌うM21は当たり前ではあるが「Drunk」の続きを聴いているようだ。
M12は生ドラムのビートに、懐かしささえ感じさせるオーソドックスなフロウがThe Rootsの未発表曲と言われたら信じてしまいそうなブーンバップで、M24等のストレートなドラムマシンのビートにも意外性がある。

全27曲で1時間超というヴォリュームながらヴァラエティに富んでいて全く中弛みは無く、アルバムとしての統一感があり散漫さは皆無で、ポップに洗練されているけれども勿論セルアウト等全く感じさせない。
確かに驚きも興奮も無いが、非の付けどころもまるで無い充実作で、「Cosmogramma」と共に始まった10年代の終わりにFlying Lotusが至った境地を思うと感慨深い。
さて来たる20年代、果たしてFlying Lotusに匹敵するようなブレイクスルーとなる存在は現わるだろうか。