2015年はブラック・ミュージック、もっと言えばジャズと西海岸の年だった。
その中心には間違いなくL.A.出身の2人のビートメイカーとラッパー − Flying LotusとKendrick Lamar − の交流があり、2人に掛かればThundercatやKamasi WashingtonとSnoop Dogがいとも簡単に繋がり、そして気が付けばこうして嘗てあれほど敵視したギャングスタ・ラップの創始者の新譜にしてラストアルバムを手に取ってしまっている。
大仰なストリングスやピアノ等の生楽器や隙間の多いローテンポのビートはイメージ通りだが、M1ではウォブリーなベースにハットの連打等のトラップの意匠を採り入れ、Gファンクがしっかりと2015年版にアップデートされている。
続いて降下するベースラインとバウンシーなビートに突然ドゥーワップ調のコーラスが挿入されるエキセントリックなM2は早くもアルバムのハイライトで、個人的な後ろめたさは完全に吹き飛ばされる。
企画物らしく多数のゲストラッパーの個性を聴くのも楽しい。
相変わらず過剰に暑苦しいEminemのラップもオムニバスの一部として聴く分には面白いし、Kendrick Lamarの多重人格振りは貫禄さえ感じさせる。
中でもKendrick Lamarと比肩する存在感を放つAnderson .Paakの流麗さとナスティさを併せ持ったテクニカルなラップと多彩なフロウは発見で、フルレングスが実に楽しみだ。
シネマティックな展開や曲調は確かに「To Pimp A Butterfly」との連続性も感じさせる。
ただ幾らサントラとは言え命乞いする女性の悲鳴と銃声で終わるM7や劇中のEasy Eが助けを求める掠れた声がサンプリングされたM9等の如何にも悪趣味なドラマ仕立てには幾分醒めた気分にならなくもない。
