Untold / Black Light Spiral

iTunesにインポートしようとしたらジャンルに「Metal」と表示されたのには笑ったが、メタルの定義が最早何だか良く判らないのは置いておいたとしても、James Blakeよりは余程Sunn O)))と併せて聴く方が相応しいアルバムであるのは間違い無い。

イントロを飾るのは木魚のように一定に打たれるタムに扇情的なサイレン音と強烈な低周波が齎すヒスノイズ。
続くM2ではジュークめいた短くカットアップされたヴォイス・サンプルのループが暴風の如きハーシュ・ノイズに飲み込まれていく。
M3の重たいキックの乱れ打ちやM4の4/4のビートで漸くダンス・ミュージックの要素が現れるが、かと言ってフロアライクな要素は全く無い。
M2で挿入されるピアノの単音を除けばメロディは皆無で、愛想のある耳に優しい要素は殆ど登場しない。
M7の荒れ狂う壮絶なノイズの音圧はThe Bugが可愛く思える程。

不穏な電子音響や地鳴りのようなドローンに時折顔を覗かせるハード・ミニマル風はポスト・インダストリアルとも共振するようで、テクノへの接近という面ではLaurel Haloとの親近性も感じさせるが、リズムにフックは無く、新奇な響きを競うようなノイズに対するフェティッシュな感覚も皆無。

本作はPearson Soundと並んでポスト・ダブステップにタグ付けされたアーティストの中でも最も待たれたファースト・アルバムだが、2014年に「Anaconda」をなぞるだけでは誰にも見向きもされなかったであろうという意味で、時流に遅れた事が本作のエクストリームさを方向付けたに違いない。
James Blakeを見出し一時代を牽引するかに思われたアーティスト/レーベル・オーナーとしては並大抵の振り切れ方ではなく、その冒険心には感服する。