昨今のLowの再浮上の理由が良く解っていなかったのだが、本作の冒頭で成程と腑に落ちるものがあった。
ノイジーで且つシンフォニックでもあるそのカオティックなイントロダクションはBon Iver「22, A Million」「I,I」と同質のもので、嘗てのスローコアの面影は無く、全く違うバンドへと変貌を遂げている。
その変化はBon Iverにも関わるプロデューサーBJ Burtonに依るところが大きいのだろうと推測されるが、過去にはSteve AlbiniやDave Fridmann等の名だたるプロデューサーと組んでいる事を鑑みると、割と他人に委ねる事で変化を誘発しようとするタイプのバンドなのかも知れない。
因みにBJ BurtonはCharli XCX「How I'm Feeling Now」も手掛けており、確かにM6の殆どハーシュ・ノイズのような質感なんかには通じるところもある。
M2冒頭のカットアップされたノイズ・ループはややこれ見よがしで、Bon Iverの場合と同じくあざとさを感じないでもないが、決して無視出来ない音響の強度を備えた作品であるのは確か。
元はディストーション・ギターと思しき、デジタル・プロセシングで歪曲されたサウンドは時に猛獣の唸り声のようで、ノイズのレベルで言えばBon Iverよりも遥かに壮絶だ。
特に低音の鳴りは凄まじくThe Bugが少し可愛く思える程で、Sunn O)))と並べたとしても遜色無い。
Bon Iverとの比較で言えば、オートチューン等のヴォーカル・エフェクトは皆無で、エコー/リヴァーブでさえ簡素な割には妙にヴォーカルのヴォリューム・レベルが大きく、時に上音とは相反した生々しささえ感じさせる。
今や有触れた声によるアンビエンスの生成を回避する事で、エクストリームな音響を一層際立たせているような感がある。