冒頭のLCD Soundsystem「All My Friends」を想起させる素朴な音色のピアノ連打こそ予想外だったが、続いて高速アルペジエイターと大仰なオーケストレーションが入ってくると、やはり一気にAnimal Collective「Feels」「Merriweather Post Pavilion」に通じるユーフォリアが充満する。
中でも特にヴォーカルのリヴァーブが強めのM9は、まるでAnimal Collectiveのどれかのアルバムに収録されていたかのような強烈な既視感を齎す。
M3等の躁的で忙しないハイエナジーなビートや、M5のコズミッシェと同時に昔のファミコンのゲーム音楽(一揆とか)を思い出させるところもあるエキゾチックなメロディのチープなシンセ等、音像は総じてよりエレクトロニックで、Animal Collectiveの作品で挙げるとすれば「Centipede Hz」が最も近いだろうか。
M11のフリー・インプロヴィゼーション風のギターは山本精一「Crown Of Fuzzy Groove」を思い起こさせるし、オプティミスティックなメロディにはThe Flaming Lipsを連想させるところもあるが、何れにせよ大雑把に言えば、Boredoms「Super Are」と「The Soft Bulletin」以降のモダン(と言っても20年以上前だが)・サイケデリアという点に於いては然程の意外性は無い。
ヴォーカルは時折Avey Tareを彷彿とさせると同時に、Wayne CoyneやJ Mascisのような、より酔いどれた人間味を感じさせる瞬間も多く、一時期のAnimal Collectiveが強烈に醸し出していた超自然的なイメージと較べると、メロディにも少し俗っぽさがあり、それが逆に単なるAnimal Collectiveのエピゴーネンでは終わらないDan Deaconの魅力だとは思う。