Kaitlyn Aurelia Smith / The Kid

M1のアンビエンスとその周囲で蠢く生き物のようなノイズの存在は、Panda Bearにも通じる電子音によるアミニズムとでも言うようなイメージを喚起させ、その点でニューエイジ云々と関連付けられるのも解らないではない。
ただ一方でM6のグリッチーなビートや、M9の微細なノイズと玩具楽器によるファンファーレのようなチャイルディッシュな旋律の組合せ等は、懐かしいDat PoliticsやChildisc周辺のエレクトロニカ・ポップを思い出させたりもして、単なるヒーリング・ミュージックからは程遠い。

揺蕩うシンセ・レイヤーのアンビエンスや非西洋的でエスニックなメロディにプレーンなヴォーカルといった要素は、否が応でも「Ekstasis」の頃のJulia Holterを思い起こさせるし、M11やM12のチェンバーな管弦楽器によるモダン・クラシカルな趣きは、その後のJulia Holterが辿ったキャリアを追随するようでもある。

他にもJulianna Barwick等を連想させる部分は多いが、それらの女性アンビエント/ドローン作家とKaitlyn Aurelia Smithのサウンドを差別化しているのは、M8等に顕著なポリリズミックでトライバルなビートの存在で、M10には何処かディスコティックな感覚もあるが、基本的にはテクノ/ハウス・ミュージックの影響をまるで感じさせないストレンジ・ポップで、Juana Molinaにかなり近いものを感じる。

更にはM13のタブラ風の音色やエチオピアン・ポップスみたいなエキゾティックなメロディには、少しGang Gang Danceを彷彿とさせるところもあり、アンビエントにサイケデリア、エレクトロニカにチェンバー・ポップに民族音楽と実に多様なイメージを喚起させる。
それ故に決定的な個性やオリジナリティが掴み辛いのもまた確かではあるのだが。