Earl Sweatshirt / I Don't Like Shit, I Don't Go Outside

イントロを飾るレイドバックしたオルガンの音色にこそ意外性はあるものの、続く浮遊するリヴァービーなギターや沈鬱なピアノのループ、アトモスフェリックなシンセのアンビエンス等にはイメージ通りのダウナーなトリップ感が充満している。

それは悪夢には違いないが、エレクトロニクスや持続音主体のドリーミーなトラックはClouddeadを彷彿とさせるところもある。
尤も全体的な印象としてはDose Oneの流暢なファスト・ラップと較べ、Earl Sweatshirtの怠惰な程緩慢なラップやコーラスと呼べるようなフックを一切欠いたアンチ・クライマックス性には天と地と程の差があるが。

本作にしろTyler The Creatorの新作にしろKendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」のお陰で存在感が薄れてしまった感は否めないが、今にも歩みを止めそうなローピッチのビートや頽廃的で虚無感さえ漂うラップは躁的なKendrick Lamarとは対照的で、ファンクネスの欠片も無い。

明らかに一昔前であればアンダーグラウンドに閉じ込められていたであろうサウンドが今ではそれでもメインストリームの一角としてメジャー・レーベルからリリースされているのを見ると、アメリカのヒップホップも変わったものだと思わされる。
成熟しきったシーンに最早アンダーグラウンドは存在しないという事か。