Lightning Bolt / Fantasy Empire

Lightning Bolt初のスタジオ録音は、タイトル通りのM1は流石にジョークだとしても、音響が交通整理される事で技巧が表面化した結果、こんなにロック、と言うかメタルっぽかったかと意外な印象を受ける。
元より手数足数の多いドラミングは実はシングルらしいが言われてみればツインペダル風で、ふとX Japan等という名前まで頭を過る。
(まぁちゃんと聴いた事は無いからイメージでしかないが。)

さらにヴォーカルが明瞭になり歌としての体裁やそれなりに真面目に作られたソングライティングが顕在化していて、スローな展開からシフトチェンジして激情型ハードコアに雪崩込むM9に、引き続きスローテンポのヒプノティックなリフの反復からグランジディストーションが爆発するM10に於ける静と動の緩急は如何にも普通のロックのよう。

流石に変則的なセットアップやエフェクターによるものだけではないだろうと思わされる装飾音も散見されるが決して顕著ではなく、特段ポスト・プロダクションに腐心した様子は聴き取れない。
敢えて言うなら微かに強まったような気がする反復性と力強いタイトなスネアの音から、Battlesにインスパイアされたという噂の信憑性が僅かに嗅ぎ取れるような、取れないような…。

成り立ちから変則性を備えた、楽器編成そのものがアイデンティティであるようなバンドがマンネリズムに陥りやすいのは当然で、そこから抜け出す為の新しい試みがリスキーなのも確か。
普通のベースを加えた際のThe Jon Spencer Blues Explosionの凋落っぷりを思い起こせば、今回のLightning Boltはそのエクストリームなイメージとは相反する慎重さとバランス感覚で、実に巧くシフトチェンジを成功させたと言っても良いだろう。