Oneohtrix Point Never / Garden Of Delete

聖俗が混濁した前作から俗の部分を抽出・培養したような内容で、「Replica」では短くカットアップされ、その全容を顕にすることのなかったループを構成するマテリアルは、本作で最早ゴミであることを隠そうとはせず、寧ろ積極的にチープネスを強調するようという点に於いて、OPNの諸作の中で最も露悪的な作品であると言えるだろう。
その点で「Replica」がデュシャン的と喩えられたのに倣えば本作は間違いなくウォーホル的である。

チージーなアルペジエイターのフレーズや持続する上昇音等のレイヴ・ミュージックのクリシェにオートチューンの多用、「R Plus Seven」で聖の部分を担っていたシンフォニックなシンセは、本作では寧ろゲーム音楽のようなイメージを喚起させ、メロウなラウンジ感覚がGames/Ford & Lopatinを彷彿とさせる瞬間もある。
部分的にはドリルンベースのブレイクのようなキック・ドラムの連打や、明瞭でグルーヴィなベースラインさえ挿入され、OPNが初めてビートを導入した作品という側面もあり、それは確実にEmeraldsの場合よりも成功を収めている。

変調されたエレクトリック・ギターのディストーションやフィードバックの音色からは、確かに本作がインスパイアされたNine Inch Nailsからの影響が垣間見える。
それはDaniel Lopatinが本作のサウンドを称した「ハイパー・グランジ」なるコンセプトを端的に表しているが、恐らく本作はポップ・ミュージック史に於いてグランジが嘲弄の対象となった初めてのレコードでもあり、それが1982年生まれのDaniel Lopatinにとっての初めてのポップの記憶であり象徴であろう事は想像に難くない。

悪趣味の発露とポップネスの奇妙な正比例にどうしたって、「Come To Daddy」や「Window Licker」の頃のAphex Twinを想起せずにはおれず(M7のようなトラックは前者のカップリングされた「Flim」の美しさを思い起こさずにおれない)、そう言えば一時期のTrent ReznorがRichard D Jamesから多大な影響を受けていた事に思いは及ぶ。
アートワークやPVに於いて動物の死骸や蛆虫といったモチーフを多用したNINに、不気味にデフォルメされた自身の顔を様々にコラージュしたAFX、そして今回OPNが制作したM4のPVは、「Pop Is Grotesque」というコンセプトの下で一直線に繋がっている。