Pangaea / In Drum Play

2015年のPearson Soundに続くHessle Audioクルーによるファースト・フルレングス第2弾は、Pearson Soundのアヴァン志向とは異なり、テクノ寄りのベース・ミュージックという従来のレーベル・カラーに近い作風になっている。
またもや遅れてきたポスト・ダブステップ世代によるデビュー作という事になるが、「Pearson Sound」で役割を完全に剥奪されていたベースはここでは未だ存在感を維持しており、輪郭が明瞭でアタックの強いビートからはDJの作る音楽という印象を強く受ける。

アルバムの冒頭は様々なリズム・パターンを持ったテクノ寄りのポスト・ダブステップとフロアライクな4つ打ちのトラックが交互に繰り出される構成で、M2等の直球のテクノにはScubaに近い感覚がある。
けれども決してテクノ一辺倒ではなく、エコー処理されたミニマル・ダブ風のシンセが散発的に鳴り響くM3や、ノンビートのアンビエント/電子音響風の小品のM5等、スタイルにはそれなりに幅もある。

ストリングスや尺八風の笛の音色等の例外はあるものの全体的に上物の存在感は希薄で、ビートを構成する音色にしてもやや古臭いくらいにストレートだが、一方でM9のハード・ミニマルのような激しいビートと変拍子による2ステップのような変則的なリズムの対比等、タイトル通りリズム・パターンのヴァリエーションは多彩で2562/A Made Up Soundにも通じる濃密さや精巧さを感じさせる。

音響に特異性がある訳でもなく、個性が見え辛く中心を欠いたような印象があり、これと言った引っ掛かりに欠けるのも確かだが、Pearson SoundやUntoldといったポスト・ダブステップの担い手達が次々と実験性に偏重していく中にあって、フロア一辺倒でもなくアヴァンギャルドにも寄り過ぎないバランス感覚には好感が持てる。