Scuba / Claustrophobia

低周波がジリジリと放電する大仰なイントロに続いて展開されるのは、ダブステップのダの字も無い純然たるテクノで、UntoldやPearson Soundを聴いた耳には余りにも古臭い。
Berghainでのレジデントの経験が反映されているのであろうフロアライクで極めて機能的な音楽は、共にポスト・ダブステップを牽引したレーベル・オーナーである前述の2人の近作と較べればポップと言っても差し支えない。

密室的な電子音響や頻繁に挿入されるフィールド・レコーディング、不安感を煽るメロディ等によって、恐らくは戦略的にアッパーにセルアウトした前作と較べると全編を通じて鬱屈したムードが漂っており、「Triangulation」と「Personality」の隙間を埋めると言えば聞こえは良いが、その分突出した部分はなく、どんどんとダサくなっていくジャケットと呼応して面白味は薄れていくよう。

野太いキック・ドラムや煽情的なハイハット、相変わらずトラックを引っ張るベースラインに2/4のキックも登場はするが、かと言って嘗て属したシーンとは何の関連もなく、特段ダブステップに拘泥するつもりも無いけれど、こういう作品を聴くとダブステップのスタイルの採用は単なる売名行為だったのかとも。

とは言えファースト・アルバムが今聴いても痺れる程に格好良い事には変わりないし、HotflushがMount Kimbieを世に送り出したレーベルである事を想起すると、戦略的な日和見主義者というよりは、単に極端に周りに染まり易い、良く言えばピュアな人なのかなんて思ったり。